概要
既存のシステムをアップグレードするのに、再インストールを行なう必要は ありません。 2 種類の方法でシステム全体や一部分を更新することができます。 1 つは 個別のソフトウエアパッケージを更新する方法 、 もう 1 つは システム全体のアップグレード です。 個別のパッケージの更新方法については 第3章 ソフトウエアのインストールと削除 と 第4章 YaST オンライン更新 で説明しています。 また、システムをアップグレードするための 2 つの方法については、 14.1.3項 「YaST を利用したアップグレード」 と 14.1.4項 「zypper を利用したディストリビューションアップグレード」 で説明していますので、そちらをお読みください。
ソフトウエアはバージョンからバージョンに上がることでサイズが 「成長」 していきます。そのため、更新処理を行なう前には df コマンドを利用し、空き容量を確認してください。 ディスク容量が足りなそうな場合は、更新処理の前にお使いのデータを別の 場所に保存し、お使いのシステムのパーティション設定を修正してください。 各パーティションにどれだけのディスク容量が必要となるかは、パーティション 設定や選択したソフトウエア、システムのバージョンに大きく依存するため、 一般的に「これ」といった値はありません。
アップグレード処理の前に、まずはお使いの環境を保持しておくため、古い設定
ファイルを別途のメディア (テープデバイスやリムーバブルハードディスク、
USB フラッシュメモリなど) にコピーしてください。主に /etc
や /var 内に存在するファイルと、いくつかの
サブディレクトリをコピーしてください。また、 /home
ディレクトリ (ホーム ディレクトリ) 以下にあるユーザデータに
ついても、バックアップメディアに書き込んでおくことをお勧めします。
なお、バックアップ作業は root
で実施してください。全てのローカルファイルを読み込むには、
root の権限が必要です。
さらに更新処理を開始する前に、ルートパーティションについても確認を
行なってください。 df / コマンドを実行すると、
ルートパーティションのデバイス名が表示されます。
例14.1「df -h コマンドでの出力例」 にある例では、ルートパーティションは
/dev/sda3 (/ にマウントされて
いるものです) 。
例14.1 df -h コマンドでの出力例¶
Filesystem Size Used Avail Use% Mounted on /dev/sda3 74G 22G 53G 29% / udev 252M 124K 252M 1% /dev /dev/sda5 116G 5.8G 111G 5% /home /dev/sda1 39G 1.6G 37G 4% /windows/C /dev/sda2 4.6G 2.6G 2.1G 57% /windows/D
既定の手順でインストールを行なったシステムを従来のバージョンから 新しいバージョンにアップグレードする場合、 YaST は特に問題を起こす ことなく、必要な変更を見積もって実施します。お使いのシステムをどれだけ カスタマイズしたのかによって、いくつかの手順 (またはアップグレード処理 の全体) が失敗することがあるため、場合によっては事前に採取しておいた バックアップデータを書き戻さなければならないかもしれません。 システムのアップグレードを始める前に、下記の問題点をご確認ください。
システムをアップグレードする前に、 /etc/passwd
ファイルや /etc/group ファイルに文法エラーがない
ことを確認しておいてください。 root
から pwck や grpck などの検証
ツールを実行することで、問題点を調査することができます。
PostgreSQL (
postgres パッケージ) を更新する前に、データベースの
ダンプを採取してください。具体的な手順については、 pg_dump
のマニュアルページをお読みください。この作業は、お使いの環境を更新する
際に、データを引き継ぐ必要がある場合にのみ必要です。
14.1.1項 「準備」 で示した準備手順を実施し終えると、 ようやくお使いのシステムをアップグレードすることができます:
まずは 項 「インストール向けのシステムスタートアップ」 (第1章 YaST を利用したインストール, ↑スタートアップ) に書かれている手順に 従い、インストール用のシステムを起動します。 YaST が起動したら 言語を選択し、 のダイアログで を選択します。 は選択しないでください。また、全ての利用可能なソフトウエアを更新する ため、追加のリポジトリについても設定を行なってください。 インストールを行なう際のリポジトリについて、詳しくは 項 「アドオン製品」 (第1章 YaST を利用したインストール, ↑スタートアップ) をお読みください。
次に YaST は、複数のルートパーティションが存在しないかどうかを確認します。
1 つだけしか存在しなかった場合は、そのまま次の手順に進みます。
複数のパーティションが見つかった場合は、アップグレードしたいルート
パーティションを選択し、 を押します
(14.1.1項 「準備」 の例では、 /dev/sda3
を選択しています) 。 YaST は、そのパーティション内にある
fstab ファイルを読み込んで分析し、記載されている
パーティションをマウントします。
![]() | 永続性のあるデバイス名 |
|---|---|
| |
何らかのリポジトリが設定されていた場合、それらの存在を確認します。 それぞれアップグレード後も使用し続けたいリポジトリや、サードパーティ 製ソフトウエアの更新元を選択します。必要に応じて を押して切り替えてください。
上述のとおりにアップグレード処理時にリポジトリを追加した場合は、 ここで実際に有効にするかどうかを設定することができます。
ダイアログでは、ご希望の要件に あわせて設定を変更することができます。通常は既定の設定のままで何も 変更する必要はありませんが、お使いのシステムを拡張させたい場合は、 や のサブメニュー内からパッケージを選択するか、追加の言語向けの対応を 追加することができます。
また、お使いのシステムをバックアップすることもできます。バックアップを 選択すると、アップグレード処理に時間がかかるようになりますので、この オプションは直近にシステムバックアップを採取していない場合にのみ、 選択してください。
アップグレード内容を確認したら、 を押すと アップグレード処理が始まります。
システムの基礎部分についてアップグレード処理が完了すると、 YaST はシステムを 再起動します。その後 YaST は残りのソフトウエアについて更新を行ないます。 必要であればリリースノートを表示させることもできます。
zypper コマンドラインユーティリティを利用することで、 お使いの環境を次のバージョンにアップグレードすることができます。このアップグレード で最も重要な点としては、システムを稼働中の状態からアップグレード作業を行なうことが できるという点があります。
この機能は、遠隔からのアップグレードを行なったり、もしくは多数の似通ったシステムを 一括でアップグレードしたりすることを希望する知識のあるユーザにとっては、魅力的な仕組み です。それほど経験の無い方であれば、 14.1.3項 「YaST を利用したアップグレード」 に 示されている手順で起動メディアから YaST を起動し、アップグレードを行なったほうが 便利でしょう。
zypper を利用してアップグレード作業を行なうにあたり、 予期しないエラーを回避するには、リスク配置を最小化する必要があります。
以前のバージョン (たとえば 11.2) から本バージョン (たとえば 11.3) に アップグレードを行なってください。アップグレード時にはマイナーバージョンを飛ばす (たとえば 11.1 またはそれ以前から 11.3 に一括アップグレードする) ことは避けて ください。また、アップグレード元のバージョンでは、利用可能なすべてのオンライン 更新を正しく適用しておいてください。
できる限り多くのアプリケーションと不要なサービスについてはできる限り停止し、 一般ユーザについてもログアウトしてください。
アップグレードにあたってはサードパーティ製や openSUSE ビルドサービスのリポジトリ を無効化するか、もしくは優先度を下げて既定のシステムリポジトリからのパッケージが 優先的にインストールされるように設定してください。アップグレード後はこれらの リポジトリを再度有効化し、アップグレード先のバージョン番号に適合するバージョン 文字列に変更してください。
詳しくは http://en.opensuse.org/SDB:System_upgrade (日本語) または http://en.opensuse.org/SDB:System_upgrade (英語) をお読みください。
![]() | システムのバックアップ採取 |
|---|---|
実際にアップグレード作業を行なう前に、お使いのシステムに対する最新の バックアップが採取されていて、かつ復元可能であることをご確認ください。 これは特に下記の手順のうちの多くを手作業で実施しなければならないため、 特に重要です。 | |
オンライン更新を実行し、ソフトウエア管理スタックが最新の状態であることを 確認します。詳しくは 第4章 YaST オンライン更新 を お読みください。
更新ソースとして利用したいリポジトリを設定します。ここで正しい設定を行なって おくことが重要です。 YaST を利用して設定する (3.4項 「ソフトウエアリポジトリとサービスの管理」 をお読みください) か、 zypper を利用して設定 (7.1項 「zypper の使用」 をお読みください) します。
![]() | リポジトリ名 |
|---|---|
下記に示す手順内で使用されるリポジトリの名前は、お使いのシステムの設定に 依存して少しずつ異なることにご注意ください。 | |
なお、現在設定されているリポジトリについて一覧を確認するには、下記のように入力します:
zypper lr -u
システムリポジトリのバージョンを以前のものからアップグレード先のバージョン に設定します。たとえば下記のように実行します:
server=http://download.opensuse.org new_ver=11.3 zypper ar $server/distribution/$new_ver/repo/oss/ openSUSE-$new_ver-Oss zypper ar $server/update/$new_ver/ openSUSE-$new_ver-Update
続いて古いリポジトリを削除します:
old_ver=11.2 zypper rr openSUSE-$old_ver-Oss zypper rr openSUSE-$old_ver-Update
zypper dup コマンドは既定のリポジトリに対してのみ
正しく動作することが保証されている仕組みであるため、まずはサードパーティ
製のリポジトリやその他の openSUSE ビルドサービスのリポジトリを無効に設定
します (ここで、 repo-alias は無効に設定
したいリポジトリの名前を指定します):
zypper mr -d repo-alias
これらのリポジトリを無効化する代わりに、優先順位を下げてもかまいません。
![]() | 未解決の依存関係に関する処理について |
|---|---|
zypper dup コマンドでは未解決の依存関係を持つ パッケージはすべて削除するようになっていますが、依存関係が満たされて いる限り、無効化されたリポジトリのパッケージについてはそのまま保持 されます。 | |
zypper dup コマンドにより、すべてのインストール済み パッケージが利用可能なリポジトリのいずれかを利用して更新されます。この 場合はインストール済みのパッケージのバージョン番号やアーキテクチャ、 製造元については考慮されません。そのため、何もない状態からインストールする 場合と同じ結果になります。また、リポジトリ内にもはや存在していない パッケージは孤立したものと判断され、そのようなパッケージは依存関係が 満たされない場合は削除されます。依存関係に問題がない場合は、そのような パッケージはインストールされたままになります。
完了したら、下記のコマンドでリポジトリの設定を確認します:
zypper lr -d
続いてローカルのメタデータとリポジトリの内容を更新するため、 zypper ref コマンドを実行します。
メタデータを更新したら、まずは zypper in zypper と入力し、 zypper 自身のアップグレードを行ないます。
zypper を更新したら、 zypper dup と入力し、 ディストリビューション本体のアップグレードを行ないます。 このとき、ライセンスの確認が求められます。
アップグレードが完了したら SuSEconfig と入力し、 基本的なシステム設定を実施します。
shutdown -r now と入力し、システムを再起動します。
システム全体をアップグレードするかどうかとは別に、個別のパッケージに ついてもアップグレードを行なうことができます。ただし、このように個別の アップグレードを行なう場合、システムの安定性や安全性については、 ご自身の責任の下で管理してください。 http://www.novell.com/linux/download/updates/ に書かれている 更新時のアドバイスをお読みください。
YaST のパッケージ選択から、必要に応じてパッケージを選択してください。 システム全体の動作に影響を与えるようなパッケージであった場合、 YaST は 警告を発します。そのようなパッケージは更新モードでのみ更新されるべきもの であるためです。たとえば多くのパッケージには 共有ライブラリ が含まれていて、それらのプログラムやアプリケーションを稼働中の状態から 更新を行なうと、システムを不安定にしてしまう可能性があります。
本章では、バージョン間の個別の修正について、概要を示しています。この概要には たとえば、基本的な設定を完全にやり直すかどうかの情報や設定ファイルの場所変更 に関する情報、もしくは一般的に使用されるアプリケーションが大幅に変更された ことに関する情報が含まれます。システムを日々使っていくにあたっての大幅な 変更は、ユーザレベルと管理者レベルの両方が記述されています。
様々なバージョンにおける特別な問題については、それらが判明次第オンラインで お知らせする仕組みになっています。個別のパッケージに関する重要な更新に ついては、 YaST オンライン更新を利用して http://www.novell.com/products/linuxprofessional/downloads/ からアクセスすることができます。また、さらなる情報は 第4章 YaST オンライン更新 に書かれています。
また、 Procuct highlights
(http://wiki.opensuse.org/Product_highlights) と
openSUSE wiki 内の Bugs 記事
(http://en.opensuse.org/openSUSE:Most_annoying_bugs)
をお読みください。こちらに直近の変更点と問題点が記されています。