概要
モバイルコンピューティングという言葉から連想されるのはラップトップ、PDA、携帯電話、そしてこれらを使ったデータ交換ではないでしょうか。外付けハードディスク、フラッシュドライブ、デジタルカメラなどのモバイルハードウェアコンポーネントは、ラップトップやデスクトップシステムに接続できます。多くのソフトウェアコンポーネントで、モバイルコンピューティングを想定しており、一部のアプリケーションは、モバイル使用に合わせて特別に作成されています。
ラップトップのハードウェアは通常のデスクトップシステムとは異なります。これは交換可能性、空間要件、電力消費などの基準を考慮する必要があるためです。モバイルハードウェアメーカーは、ラップトップハードウェアを拡張するために使用可能なPCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)、Mini PCI、Mini PCIeなどの標準インタフェースを開発してきました。この標準ではメモリカード、ネットワークインタフェースカード、ISDNおよびモデムカード、そして外部ハードディスクをカバーします。
![]() | SUSE Linux Enterprise DesktopおよびタブレットPC |
|---|---|
SUSE Linux Enterprise Desktopはまた、タブレットPCをサポートします。タブレットPCには、タッチパッド/デジタイザが付属しており、マウスとキーボードを使用するのではなく、デジタルペンやさらに指による操作で画面上で直接データを編集できます。タブレットPCは、他のシステムとまったく同じようにインストールおよび設定されます。タブレットPCのインストールおよび設定について詳しくは、第19章 タブレットPCの使用を参照してください。 | |
ラップトップの製造時、消費電力を最適化したシステムコンポーネントを組み込むことで、電源に接続しなくてもシステムを快適に使用できるようにしています。電源の管理に関するこうした貢献は少なくともオペレーティングシステムの貢献度と同じくらい重要です。SUSE® Linux Enterprise Desktopはラップトップの電源消費量に影響する様々なメソッドをサポートすることで、バッテリー使用時の操作に数々の効果をあげています。次のリストでは電源消費量節約への貢献度の高い順に各項目を示します。
CPUの速度を落とす。
休止中にディスプレイの照明を切る。
ディスプレイの明るさを手動で調節する。
ホットプラグ対応の使用していないアクセサリを切断する(USB CD-ROM、外付けマウス、使用していないPCMCIAカード、WLANなど)。
アイドル中にはハードウェアディスクをスピンダウンする。
SUSE Linux Enterprise Desktopでの電源管理の詳細な背景情報は、第18章 電源管理に示されています。デスクトップ固有の電源管理に関する詳細については、「デスクトップの電源管理」 (第2章 デスクトップの使用, ↑GNOME ユーザガイド)のGNOME電源マネージャの使用方法を参照してください。KDE電源管理アプレットの詳細については、第9章 Controlling Your Desktop’s Power Management (↑KDE User Guide)を参照してください。
モバイルコンピューティングに使用する場合、ご使用のシステムを操作環境の変化に順応させる必要があります。多くのサービスは環境に依存するので、環境を構成するクライアントの再設定が必要です。SUSE Linux Enterprise Desktopはこうしたタスクをユーザに代わって実行します。
スモールホームネットワークとオフィスネットワーク間でラップトップを持ち運びする場合に影響のあるサービスは次のとおりです。
IPアドレスの割り当て、名前解決、インターネット接続、およびその他のネットワークへの接続が含まれます。
使用可能なプリンタの現在のデータベース、および使用可能なプリントサーバが、ネットワークに応じて表示されなければなりません。
印刷と同様、現在の環境に対応するサーバが表示されなければなりません。
ご使用のラップトップがプロジェクタまたは外付けモニタに一時的に接続されている場合、別のディスプレイ設定が使用可能になっている必要があります。
SUSE Linux Enterprise Desktopではラップトップを既存の操作環境に統合させる複数の方法を提供しています。
NetworkManagerは、ラップトップでのモバイルネットワーキング用に特別に作成されています。NetworkManagerは、ネットワーク環境間、またはモバイルブロードバンド(GPRS、EDGE、または3G)、ワイヤレスLAN、Ethernetなどのさまざまなタイプのネットワーク間を容易に、自動的に切り替える方法を提供します。NetworkManagerは、ワイヤレスLANでのWEPおよびWPA-PSKの暗号化をサポートします。また、(smpppdにより)ダイアルアップ接続をサポートします。両方のデスクトップ環境(GNOMEおよびKDE)には、NetworkManagerのフロントエンドが含まれています。デスクトップアプレットの詳細については、23.4項 「KNetworkManagerの使用」および23.5項 「GNOME NetworkManagerアプレットの使用」を参照してください。
表16.1 NetworkManagerの使用
|
マイコンピュータ… |
NetworkManagerの使用 |
|---|---|
|
ラップトップである |
対応 |
|
別のネットワークに接続される場合がある |
対応 |
|
ネットワークサービスを提供する(DNSまたはDHCP) |
非対応 |
|
スタティックIPアドレスのみを使用する |
非対応 |
NetworkManagerがネットワーク設定を扱うのが適切でない場合、YaSTツールを使用してネットワークを設定します。
![]() | DNS設定と、各種ネットワーク接続 |
|---|---|
ラップトップを持って移動し、ネットワーク接続の種類を頻繁に変更する場合、すべてのDNSアドレスがDHCPで正常に割り当てられている場合はNetworkManagerは正常に機能します。一部の接続で静的DNSアドレスを使用する場合は、そのアドレスを | |
サービスロケーションプロトコル(SLP)は既存のネットワークでのラップトップの接続を容易にします。SLPがなければラップトップの管理者は通常ネットワークで使用可能なサービスに関する詳細な知識が必要になります。SLPはローカルネットワーク上のすべてのクライアントに対し、使用可能な特定のタイプのサービスについてブロードキャストします。SLPをサポートするアプリケーションはSLPとは別に情報を処理し、自動的に設定することが可能です。SLPはシステムのインストールにも使用でき、適切なインストールソースの検索作業が最小化されます。SLPの詳細については、第21章 ネットワーク上のSLPサービスを参照してください。
モバイル用途には、専用ソフトウェアにより対応されるシステムモニタリング(特にバッテリの充電)、データ同期、周辺機器との無線通信、インターネットなど、さまざまな特別タスク領域が存在します。次のセクションでは、SUSE Linux Enterprise Desktopが各タスクに提供する最も重要なアプリケーションについて説明します。
SUSE Linux Enterprise Desktopでは2種類のKDEシステムモニタリングツールを提供しています。
は、KDEデスクトップの省エネ関係の動作を調整できるアプリケーションです。このアプリケーションには、通常、トレイアイコンでアクセスします。このアイコンは、現在の電源タイプに応じて変化します。設定ダイアログを開くには、を使用する方法もあります: +++
トレイアイコンをクリックして、動作を設定するオプションにアクセスします。表示された5つの電源プロファイルから、自分のニーズに最も適合する1つを選択できます。たとえば、スキーマは一般にスクリーンセーバーと電源管理を無効にするため、プレゼンテーションはシステムイベントによって中断されません。をクリックして、さらに複雑な設定の画面を表示します。ここで、個々のプロファイルを編集し、ラップトップのカバーが閉じられている場合やバッテリ残量が低い場合の処置など、高度な電源管理に関するオプションや通知を設定できます。
(とも呼ぶ)は、測定可能なシステムパラメータを1つのモニタリング環境に集めます。このモニタは、デフォルトでは、2つのタブに出力情報を表示します。は、CPUロード、メモリ使用量、プロセスのID番号と適切な値など、現在実行中のプロセスの詳細情報を提供します。収集されたデータのプレゼンテーションとフィルタリングはカスタマイズできます。新しいタイプのプロセス情報を追加するには、プロセステーブルのヘッダを左クリックして、隠したい欄やビューに追加したい欄を選択します。さまざまなデータページで各種のシステムパラメータを監視したり、ネットワーク上でさまざまなコンピュータにあるデータを並行して収集することも可能です。KSysguardはKDE環境がなくてもマシン上でデーモンとして実行できます。このプログラムについての詳細な情報は、プログラムに組み込まれたヘルプ機能かSUSEヘルプページを参照してください。
GNOME環境では、とを使用します。
ネットワークから切断されたモバイルマシンと、オフィスのネットワーク上にあるワークステーションの両方で作業を行う場合、すべての場合で処理したデータを同期しておくことが必要になります。これには電子メールフォルダ、ディレクトリ、個別の各ファイルなど、オフィスでの作業時と同様、オフィス外で作業する場合にも必要となるものが含まれます。両方の場合のソリューションを次に示します。
オフィスネットワークで電子メールを保存するためにIMAPアカウントを使用します。これで電子メールは、KMail、Evolution、またはMozilla Thunderbird Mailなどのような切断型IMAP対応電子メールクライアントを使用するワークステーションからアクセスできるようになります。これについてはGNOME ユーザガイド (↑GNOME ユーザガイド)とKDE User Guide (↑KDE User Guide)に説明があります。送信メッセージで常に同じフォルダを使用するには、電子メールクライアントでの設定が必要になります。また、この機能により、同期プロセスが完了した時点でステータス情報とともにすべてのメッセージが使用可能になります。未送信メールについての信頼できるフィードバックを受信するためには、システム全体で使用されるMTA postfixまたはsendmailの代わりに、メッセージ送信用のメールクライアントに実装されたSMTPサーバーを使用します。
ラップトップとワークステーション間のデータの同期に対応するユーティリティが複数あります。最もよく使用されるものには、rsyncというコマンドラインツールがあります。詳細については、そのマニュアルページを参照してください(man 1 rsync)。
ラップトップは、ケーブルを使用して自宅やオフィスのネットワークに接続するのと同様に、他のコンピュータ、周辺機器、携帯電話、PDAなどに無線接続することもできます。Linuxは3種類のタイプの無線通信をサポートします。
WLANは、これらの無線テクノロジの中では最大規模で、規模が大きく、ときに物理的に離れているネットワークでの運用に適している唯一のテクノロジと言えます。個々のマシンを相互に接続して、独立した無線ネットワークを構築することも、インターネットにアクセスすることも可能です。アクセスポイントと呼ばれるデバイスがWLAN対応デバイスの基地局として機能し、インターネットへの中継点としての役目を果たします。モバイルユーザは、場所や、どのアクセスポイントが最適な接続を提供するかに応じて様々なアクセスポイントを切り替えることができます。WLANユーザは携帯電話網と同様の、特定のアクセス場所にとらわれる必要のない大規模ネットワークを使用できます。WLANの詳細については、「第17章 無線LAN」を参照してください。
Bluetoothはすべての無線テクノロジに対するブロードキャストアプリケーション周波数を使用します。BluetoothはIrDAのように、コンピュータ(ラップトップ)およびPDAまたは携帯電話間で通信するために使用できます。また範囲内に存在する別のコンピュータと接続するために使用することもできます。Bluetoothは、キーボードやマウスなど無線システムコンポーネントとの接続にも用いられます。ただし、このテクノロジはリモートシステムをネットワークに接続するほどには至っていません。壁のような物理的な障害物をはさんで行う通信にはWLANテクノロジが適しています。
IrDAは狭い範囲での無線テクノロジです。通信を行う両者は相手の見える位置にいなくてはなりません。壁のような障害物をはさむことはできません。IrDAで利用できるアプリケーションはラップトップと携帯電話間でファイルの転送を行うアプリケーションです。ラップトップから携帯電話までの距離が短い場合はIrDAを使用できます。ファイル受信者への長距離におよぶファイルの転送はモバイルネットワークが送信します。IrDAのもう1つのアプリケーションは、オフィスでの印刷ジョブを無線転送するアプリケーションです。
無認証のアクセスに対し、複数の方法でラップトップ上のデータを保護するのが理想的です。実行可能なセキュリティ対策は次の領域になります。
常にシステムを物理的な盗難から守ることを心がけます。チェーンなど、さまざまな防犯ツールが小売店で販売されています。
ログインとパスワードによる標準の認証に加えて、生体認証を使用します。SUSE Linux Enterprise Desktopでは、指紋認証がサポートされます。詳細については、第7章 Using the Fingerprint Reader (↑Security Guide (セキュリティガイド))を参照してください。
重要なデータは転送時のみでなく、ハードディスク上に存在する時点でも暗号化するべきです。これは盗難時の安全性確保にも有効な手段です。SUSE Linux Enterprise Desktopでの暗号化パーティンションの作成については第11章 Encrypting Partitions and Files (↑Security Guide (セキュリティガイド))に記載されています。また、YaSTによりユーザーを追加するときに暗号化されたホームディレクトリを作成する場合もあります。
![]() | データのセキュリティとディスクへのサスペンド |
|---|---|
暗号化パーティションは、ディスクへのサスペンドのイベントの際にもアンマウントされません。それで、これらのパーティション上のデータは、ハードウェアが盗まれた場合、ハードディスクのレジュームを行うことで、誰にでも入手できるようになります。 | |
データの転送には、転送方法に関わらず、セキュリティ保護が必要です。Linuxおよびネットワークに関する一般的なセキュリティ問題については、第1章 Security and Confidentiality (↑Security Guide (セキュリティガイド))を参照してください。無線ネットワークについてのセキュリティ対策は第17章 無線LANに記載されています。
SUSE Linux Enterprise DesktopはFireWire(IEEE 1394)またはUSB経由のモバイルストレージデバイスを自動検出します。モバイルストレージデバイスという用語は、FireWire、USBハードディスク、USBフラッシュドライブ、デジタルカメラのいずれにも適用されます。これらのデバイスは、対応するインタフェースを介してシステムに接続されるとすぐに自動的に検出されて設定されます。GNOMEとKDEのファイルマネージャは、いずれもモバイルハードウェアアイテムを柔軟に処理します。これらのメディアを安全にアンマウントするには、いずれかのファイルマネージャの(KDE) 機能または(GNOME) 機能を使用します。デスクトップを使用したリムーバブルメディアの処理に関する詳細は、GNOME ユーザガイド (↑GNOME ユーザガイド)とKDE User Guide (↑KDE User Guide)を参照してください。
システムが外付けハードディスクを正しく認識するとすぐに、外付けハードディスクのアイコンがファイルマネージャに表示されます。アイコンをクリックすると、ドライブの内容が表示されます。ここでフォルダやファイルの作成および編集、削除を実行できます。システムに指定されたハードディスクの名前を変更するには、アイコンを右クリックしたときに開くメニューから、対応するメニューアイテムを選択します。この名前変更はファイルマネージャでの表示に限られています。/mediaにマウントされているデバイスのデスクリプタは、これには影響されません。
システムはこれらのデバイスを外付けハードディスクと同じように扱います。同様にファイルマネージャでエントリの名前変更をすることが可能です。
システムによって識別されたデジタルカメラもまた、ファイルマネージャの概要に外付けドライブのように表示されます。KDEではURLcamera:/から写真を読み取ったり、アクセスしたりできます。さらに画像はdigiKamまたはf-spotを使用して処理できます。高度な写真処理はGIMPを使用して行います。digiKam,、f-spot、GIMPに関する簡単な説明は、第18章 digiKam:デジタル画像コレクションの管理 (↑アプリケーションガイド)、第19章 F-スポット:デジタル画像コレクションの管理 (↑アプリケーションガイド)および第17章 GIMP:グラフィックの操作 (↑アプリケーションガイド)を参照してください。
デスクトップシステムまたはラップトップはbluetoothまたはIrDAを介して携帯電話と通信できます。一部のモデルで両方のプロトコルをサポートしていますが、どちらか一方のみしかサポートしていないものもあります。これら2つのプロトコルの使用可能エリア、およびそれぞれの拡張マニュアルは16.1.3.3項 「無線通信」ですでに説明しました。携帯電話側のこれらのプロトコルの設定はそれぞれのマニュアルに記載されています。
Plam社製のハンドヘルドデバイスを用いた同期のサポートはEvolutionおよびKontactにすでに組み込まれています。デバイスとの初期接続はウィザードを利用して簡単に実行できます。Palm Pilotsのサポートを設定し終えたら、同期するデータのタイプ(アドレス、アポイントなど)を決定する必要があります。詳細については、GNOME ユーザガイド (↑GNOME ユーザガイド)とKDE User Guide (↑KDE User Guide)を参照してください。
プログラムopensyncでは、より高度な同期ソリューションが利用可能です(さまざまなデバイスのパッケージlibopensync、および対応するプラグインを参照してください)。
モバイルデバイスおよびLinuxに関連するすべてのお問い合わせはhttp://tuxmobil.org/を参照してください。このWebサイトでは、ラップトップのハードウェア、ソフトウェア、PDA、携帯電話、その他のモバイルハードウェアについて複数のセクションで取り扱います。
http://tuxmobil.org/ではhttp://www.linux-on-laptops.com/、と同様の内容について参照できます。ラップトップおよびハンドヘルドデバイスについての情報はここを参照してください。
SUSEはラップトップを主題としたドイツ語の専用メーリングリストを運営しています。詳細については、http://lists.opensuse.org/opensuse-mobile-de/を参照してください。このリストではユーザと開発者がSUSE Linux Enterprise Desktopでのモバイルコンピューティングに関するあらゆるテーマを話題にしています。英語での投稿には回答されますが、アーカイブされた情報のほとんどはドイツ語です。英語の投稿ではhttp://lists.opensuse.org/opensuse-mobile/を使用します。
OpenSyncの詳細については、http://en.opensuse.org/OpenSyncを参照してください。